臓器移植患者団体連絡会、厚労省へ要望書提出
(2005年4月15日)

平成17年4月15日臓器移植患者団体連絡会は、尾辻秀久厚生労働大臣に
臓器移植に関わる要望書を提出しました。
今回は、昨年から保険適用が認められた体内埋込み型左室補助人工心臓ノバコアが、
日本臓器移植ネットワーク登録前に使用することが保険で認められていないので、やむを得ず
国循型の体外循環型を使わざるを得ない症例が多くあり、この保険適用を認めるように 新たに要望に加えました。残念ながらそれ以外では、昨年の10月と同じ内容になりました。
一昨年から昨年にかけては生体肝移植やノバコアの保険適用、健康保険証に意思表示欄を 設けても良いと言う省令など成果がありましたが、この半年間では目に見えた前進はありませんでした。
政府管掌保険証カードに意思表示欄を設ける要望は、施行規則を変えるだけで良いはずであるのに 毎回、全く要領の得ない回答ばかりで、こちらもつい声を荒げてしまいました。
「法律に明記されれば翌年度初めから実施す」とのことでした。身体障害者福祉法について厚労省の回答は、 「15年度より問題を整理し、内部障害者も含め3年をかけ厚労省の研究班で検討しているところで、 今後どうなるかは分からない。障害年金の見直しについては、要望は承りましたが次回見直しについては まだ具体的にいつ行うかは決まっていない」とのことでした。 保険適用や薬価基準の改定の要望は、「学会からも資料を添えて出して欲しい。期日は6月30日まで。 ノバコアについては、海外の事例も出してください。どこから使用するのが適切であるか線引きの代替案を示して欲しい」 とのことでした。
なお後日、臓器移植に関する非保険適用の薬剤リストを担当者に提出しました。
まだまだ移植者は、数も少なく政策に影響を与えるだけの力が弱いこともありますが、
少なくても我国の移植者は、1万人近くいると思われるで、組織率の低さも関係すると思います。
国との交渉では数は力となります。私たちにいとっては組織拡大が大きな課題です。
今後とも粘り強く厚労省と交渉して行きたいと思います。



臓器移植に関わる要望


▼生前の本人の意思を尊重しつつ、本人が提供拒否の意思表示がないときは、
家族の同意にて提供できるよう臓器移植法を見直してください。

▼厚生労働省は、臓器移植医療の推進を国の施策とし、脳死及び臓器移植について国民に理解を得られるよう、
マスメディアをはじめ、あらゆる機会を通じ積極的かつ継続的に普及啓発活動を行ってください。
また地方自治体が積極的に移植啓発活動を行うよう強力に指導してください。
昨年の内閣府の世論調査でも80%の方が臓器移植に関する情報が不足していると回答しています。

▼各都道府県の移植コーディネーターを専任とするとともに、提供病院の院内コーディネーター設置など、
体制整備を行うよう都道府県を強く指導してください。

▼救急救命等の提供施設において、臓器提供可能な患者が発生した場合、
家族に対し必ず提供意思の有無を確認することを制度化してください。
現状では、コンピュータを使用した提供意思の登録は、少ない予算で十分可能です。
 政府管掌保険や国民健康保険については、カード化にともない意思表示記入欄を設けてください。
 もし保険証やカードに記入欄を設けることができないときは、保険者が保険証又はカードを配付する際、
必ず意思表示シールと説明パンフレットを同封することを義務づけてください。
運転免許証に意思表示記入欄を設けるよう警察庁に働き掛けてください。
また欄ができるまでは運転免許交付時に、意思表示シールと説明パンフレットを必ず配布するよう警察庁に働き掛けください。


▼少・中・高の学校教育に臓器移植を取り上げるように文部省に働き掛けてください。

▼臓器提供の意思を生かすためにも臓器提供施設を拡大してください。また一般の 信頼を得るために
臓器提供施設においては、医療従事者の増員を行うなど救命救 急医療の充実を図ってください。
提供施設の拡大にあたっては、新たに審査認定を行うなど具体的な施策を実行してください。

▼身体障害者福祉法を改正し、全ての移植者を内部障害者として認定してください。
肝臓移植者は、障害者として認定を受けていません。手術も全額負担をし、その後も高額な医療費負担のために、
生活にも困窮している肝臓移植者が数多くいます。内部障害者に肝臓やその他の移植者も全て認定してください。


▼移植者に支給されている障害年金を少なくとも3年間は無条件で継続してください。
また移植者の障害認定にあたっては、合併症などを含め総合的に判断することを周知徹底してください。
1998年5月28日の全国腎臓病協議会と厚生省との折衝において腎臓移植者について移植後3年間は、
支給停止にしていないとの回答をしながら、2002年の認定基準でその他欄に「臓器移植の取り扱い」の項目をもうけ、
突然「移植後1年間は支給停止にしない」と変更しました。移植者の身体の状態は、術後すぐに安定するわけではありません。
合併症も少なくなく、精神的にも不安定な状況が続きます。また約3分1は移植直後、無職の状況です。
以前同様に障害年金を移植後3年間は無条件で支給継続してください。
2002年4月のから認定基準に付け加えられた 「臓器移植の取扱い 」が周知徹底しておりません。
殆どの移植者が何らかの合併症をかかえています。移植者の障害認定にあたっては、合併症も十分考慮し、
身体や精神の状態を総合的に判断し行って下さい。


▼全ての移植医療に健康保険を適用してください。
脳死下での心臓、肝臓移植は高度先進医療が適応されていますが、少なくとも5百万円近い費用が必要です。
また生体肺移植や小腸、膵臓・膵島移植は、健康保険が適用されず1500万円を超す費用が必要です。
一日も早く全ての移植医療に健康保険の適用を認めてください。
B型肝炎治療薬として広く使用されているヘブスブリンなど、移植後服用する薬剤は、健康保険適用がされていなかったり、
適用範囲が限定されています。移植者に高額な薬剤費を負担させることがないよう、速やかに保険適用の範囲を広げてください。


▼免疫抑制薬剤の薬価基準を見直し、引き下げてください。
移植者は、免疫抑制剤を一生飲み続けなければなりません。最近では、制度の変更により毎年のように移植者の自己負担額は、
増加しております。他の薬剤に比べ著しく高い免疫抑制剤もあります。免疫抑制剤の薬価を引き下げ、移植者の負担を減らしてください。


▼昨年から保険適用が認められた体内埋込み型左室補助人工心臓ノバコアを、
日本臓器移植ネットワーク登録前に使用する際にも保険適用を認めてください。
ネットワークに登録するまで保険適用が認められないために、登録前の重篤な患者さんは国循型の体外型を
使用するしか方法がありません。また埋込み型を使用する場合は、登録後再手術を必要とします。
ノバコアをネットワークへの登録の有無で差別することなく症状によって使用できるようにしてください。





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