BSEが海外で発生し、牛肉の輸入が国際問題となっていますが、BSEからの感染による海外での変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の発症を受け、平成13年より献血に準じて英国とフランスなどは6ヶ月を超える滞在者、その他の危険国においても長期滞在者の臓器提供やから除外する処置がとられてきました。ところが今年2月に我国で初めて死亡患者が発生し、その患者が1989年ごろ約1ヶ月の英国滞在歴があることが判明し、献血においては英国において1996年以前は1日、1997年以後は6ヶ月の滞在歴があるものは、献血対象から除外することになりました。そこで献血と臓器提供では全く事情が異なるゆえ以下の要望書を本年4月21日尾辻秀久厚生労働大臣宛に提出しました。 この問題は、4月25日の厚労省臓器移植委員会で取り上げられ、議論の結果、ほぼ我々の要望が認められ以下のようにレシピエントに対するインフォームドコンセント行うことにより実質的には制限を受けることがなく臓器移植が行われることになりました |
厚生労働大臣 尾辻 秀久 様 臓器移植における変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)関わる規制に対する要望 | |||||||||||||||||||||||||||
常々、移植医療推進にご理解、ご協力を賜り誠にありがとうございます。当協議会は、全国の臓器移植者および家族1600人で構成する我国唯一の移植者団体として、1991年より臓器移植医療の推進及び移植者の社会的環境整備を目的として活動しております。 さて、厚生労働省臓器移植対策室は、本年2月7日付けで暫定的な措置として、1980年以降通算1ヶ月以上英国滞在歴を有するものからの臓器及び眼球の提供を見合わせる対応をお願いしたのに加え、献血同様に英国での滞在期間の短縮及び他の欧州諸国滞在についても臓器及び眼球の提供者から除くことが検討されているようです。 当協議会と致しましては、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)関わる規制については、献血同様の処置をとることに強く反対を致しております。献血におきましては、今回の措置で数パーセント献血が減少すると云われておりその供給に支障を来す可能性が指摘されています。特定の人からのみ血液の提供を受けるのでなく、不特定多数の人から集めた血液を供給する献血においては、この措置は致し方がないと思います。 しかし特定の人から、特定の人へ、マンツーマンで提供される臓器移植にあっては事情は献血とまったく違います。すべての臓器移植が提供者も受者も特定し記録され、受者については、移植後も半永続的に医療機関によって観察されます。 臓器移植の受者にとっては、移植こそが生命維持の絶対条件であります。現在、専門家の予測によりますと我国における変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の発症率は1億分の1に満たないとされています。余命1年もしくは2年と宣告された患者が、次回はいつ提供されるか分からない現状で、1億分の1しか可能性のない感染症の発症を恐れ、移植を辞退するでしょうか。しかし辞退する患者が全くないとは言い切れません。そのために受者に提供者の海外渡航歴を明らかにし、感染症についての情報を提供した上で選択をさせることで対策としては、充分と思われます。 7年半前に臓器移植法が制定されましたが、脳死下での提供は、年間数例にとどまっており、また心停止下での献腎提供も、一昨年よりようやく増加に転じましたが提供される方は100人にも満たない状況にあります。この様な状況にあっては、一人でも多くの患者を救うことを最重要として、施策を執ることがなりより肝要と存じます。 私達は、これからも移植医療が一般医療として定着し、多くの方々が安心して移植が受けられ、その命が救われることを願い、活動して参ります。 貴職におかれましては、私達の要望にご理解を賜り、速やかに臓器移植における変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)に関する措置を解除していただきますようお願い申し上げます。 NPO日本移植者協議会 理事長 大久保 通方 厚生労働省の対応案 (1) 以下の欧州渡航歴を有する者からの臓器提供は、原則として見合わせる。 | |||||||||||||||||||||||||||
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(注1) Bに掲げる国の滞在歴を計算する際には、Aに掲げる国の滞在歴を加算するものとする。 (2)しかしながら、移植医療における緊急性、代替性等にかんがみ、当分の間、ドナー候補者が 上記(1)に該当する場合であっても、あっせん機関は、レシピエント候補者の検索を行うこととし、当該レシピエント候補者が、vCJD及び移植に伴う感染リスクについて移植医から十分な説明を受けた上で、当該ドナー候補者からの臓器の提供を受ける意思を明らかにしている場合にあってはこの限りではない。 (3)上記(2)により移植が行われた場合には、臓器あっせん機関は、移植医に対して、vCJDの発症に関するレシピエントのフォローアップを十分行うよう促すこととする。 (4)組織移植については、臓器移植における取扱いを参考とし、緊急性と代替性の判断にあたっては慎重な検討を求めることとする。 |