日本移植者協議会2005年活動記録

厚生労働省へ要望書提出
(臓器移植患者団体連絡会)


例年春と秋に行なっています対厚労省折衝は、今年は16日が日曜日のため10月13日(木)に行ないました。
(要望書は下記参照)
毎回同じことを要望しなければならないことは辛いことです。今まで実現したのは、生体肝移植の保険適用や埋め込み型左室人工心臓ノバコアの保険適用。それに各保険者に通達として「健康保険証やカードに臓器提供の意思表示欄もしくは、シールの添付欄を設けても良い」と合わせても3つくらいです。
今回も移植医療の保険適用やノバコアの保険適用拡大。移植に関わる薬剤の適用の拡大などを強く求めました。移植医療の保険適用については、かなり広がることが予想されますし、また数が増えることによっても保険適用の道が開かれると思います。ここはやはり臓器移植の普及にかかっているということです。
今回一番問題となったのは、政府管掌保険証カードに提供意思表示欄を設けるという問題です。厚労省の担当者は、全くやる気がなく「法律が改正になればします」の一点張り。省内での規則改正だけで出来ることもやろうとしない。各団体とも強く意見を述べましたが議論は堂々巡りでかみ合わず終わりました。2年ごとに代わる役人の無責任さには本当にあきれます。
今回要望の中で一つ実現しそうなのは、コンピュータによる意思登録制度です。来年度の予算措置がとられる模様で法律改正がなった時は、拒否の意思の尊重にも有効であり、健康保険証、自動車免許証の意思記載欄と合わせて、広く意思表示機会を増やすことになります。それ以外では、あまり成果が上がっていませんが、今後も粘り強く交渉して行きたいと思います。
なお年金課からは、すでに3年前から臓器移植者については、数値だけでなく身体の状態を総合的に判断して決定することになっており、常に周知徹底を図っているが、そうでない事例があった時は、直接連絡をしてもらえれば対処しますとのことでした。

臓器移植に関わる要望

臓器移植法は、条文で3年をめどにみなおすと記されているのも関わらず、既に8年を経過しています。速やかに厚生労働省としても生前の本人の意思を尊重しつつ、本人が提供拒否の意思表示がないときは、家族の同意にて提供できるように臓器移植法の見直しに積極的に関与してください。
厚生労働省は、臓器移植医療の推進を国の施策とし、脳死及び臓器移植について国民に理解を得られるよう、マスメディアをはじめ、あらゆる機会を通じ積極的かつ継続的に普及啓発活動を行ってください。
また地方自治体が積極的に移植啓発活動を行うよう強力に指導してください。
 臓器移植の普及啓発はまだまだ不十分です。昨年の内閣府の世論調査でも80%の方が臓器移植に関する情報が不足していると回答しています。
各都道府県の移植コーディネーターを専任とするとともに、都道府県の枠を超え連携して活動できるようにしてください。また提供病院の院内コーディネーター設置など、体制整備を行うよう都道府県を強く指導してください。
救急救命等の提供施設において、臓器提供可能な患者が発生した場合、家族に対し必ず提供意思の有無を確認することを制度化してください。現状においては、少なくとも意思表示カードの所持の有無を確認するよう強く指導してください。
より確実に臓器提供の意思を活かせるように、提供意思登録制度を導入してください。また現行の意思表示シールではなく健康保険証または、カード及び運転免許証に提供意思を記入できる欄を設けてください。
 現在、コンピュータを使用した提供意思の登録は、少ない予算でも十分可能です。
 政府管掌保険や国民健康保険については、カード化にともない意思表示記入欄を設けてください。
 もし保険証やカードに記入欄を設けることができないときは、保険者が保険証又はカードを配付する際、必ず意思表示シールと説明パンフレットを同封することを義務づけてください。
運転免許証に意思表示記入欄を設けるよう警察庁に働き掛けてください。また欄ができるまでは運転免許交付時に、意思表示シールと説明パンフレットを必ず配布するよう警察庁に働き掛けてください。
小・中・高の学校教育に臓器移植を取り上げるように文部省に働き掛けてください。
臓器提供の意思を生かすためにも臓器提供施設を拡大してください。
また一般の信頼を得るために臓器提供施設においては、医療従事者の増員を行うなど救命救急医療の充実を図ってください。
 提供施設の拡大にあたっては、新たに審査認定を行うなど具体的な施策を実行してください。
身体障害者福祉法を改正し、全ての移植者を内部障害者として認定してください。
肝臓移植者は、障害者として認定を受けていません。手術も全額負担をし、その後も高額な医療費負担のために、生活にも困窮している肝臓移植者が数多くいます。内部障害者に肝臓やその他の移植者も全て認定してください。
移植者に支給されている障害年金を少なくとも3年間は無条件で継続してください。また移植者の障害認定にあたっては、合併症などを含め総合的に判断することを周知徹底してください。
1998年5月28日の全国腎臓病協議会と厚生省との折衝において腎臓移植者について移植後3年間は、支給停止にしていないとの回答をしながら、2002年の認定基準でその他欄に「臓器移植の取り扱い」の項目をもうけ、突然「移植後1年間は支給停止にしない」と変更しました。移植者の身体の状態は、術後すぐに安定するわけではありません。合併症も少なくなく、精神的にも不安定な状況が続きます。
また約3分1は移植直後、無職の状況です。以前同様に障害年金を移植後3年間は無条件で支給継続してください。
全ての移植医療に健康保険を適用してください。
 脳死下での心臓、肝臓移植は高度先進医療が適応されていますが、少なくとも5百万円近い費用が必要です。
 また生体肺移植や小腸、膵臓・膵島移植は、健康保険が適用されず1500万円を超す費用が必要です。一日も早く全ての移植医療に健康保険の適用を認めてください。
 B型肝炎治療薬として広く使用されているヘブスブリンなど、移植後服用する薬剤は、健康保険適用がされていなかったり、適用範囲が限定されています。移植者に高額な薬剤費を負担させることがないよう、速やかに保険適用の範囲を広げてください。
免疫抑制薬剤の薬価基準を見直し、引き下げてください。
 移植者は、免疫抑制剤を一生飲み続けなければなりません。最近では、制度の変更により毎年のように移植者の自己負担額は、増加しております。他の薬剤に比べ著しく高い免疫抑制剤もあります。
 免疫抑制剤の薬価を引き下げ、移植者の負担を減らしてください。
昨年から保険適用が認められた体内埋込み型左室補助人工心臓ノバコアを、日本臓器移植ネットワーク登録前に使用する際にも保険適用を認めてください。
ネットワークに登録するまで保険適用が認められないために、登録前の重篤な患者さんは国循型の体外型を使用するしか方法がありません。また埋込み型を使用する場合は、登録後再手術を必要とします。ノバコアをネットワークへの登録の有無で差別することなく症状によって使用できるようにしてください。


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