日本移植者協議会ニュース
移植ニュース(2011/03/12)

人工心臓の承認と保険適用・レシピエント選択基準の変更

人工心臓の承認と保険適用

欧米で主流の体内埋め込み型の補助人工心臓2種類の製造販売が、2010年12月に承認されました。補助人工心臓は弱った心臓の代わりにポンプで血液を循環させるもので、日本では移植手術までの「つなぎ」として認められました。今回承認されたのは、植え込み型補助人工心臓の「デュラハート」(テルモ)と「エヴァハート」(サンメディカル技術研究所)の2機種でいずれも日本で開発された機器です。埋め込まれる駆動部分は540gと420gの超小型でデュラハートは治験開始からわずか2年という異例の早さで、エヴァハートも同5年で承認されました。

日本移植者協議会では、臓器移植患者団体連絡会として厚生労働省に体内埋め込み型補助人工心臓の承認と保険適用を長年にわたり要望してきました。その結果ノバコアが2006年に保険適用される様になりましたが、その時には既に生産中止となっており、実質的に使用できる埋め込み型補助人工心臓はなく、相変わらず旧型の体外式が使われて来ました。体外式の補助人工心臓は、血栓が出来やすく、2〜3ヶ月で交換しなければなりませんし、退院は勿論運動もままならい状態で生活しなければなりません。埋め込み型補助人工心臓は2年から3年間交換が不要であることや自宅に帰れること、ある程度の運動ができるなど患者にとって遙かにQOLが向上するとともにコスト面のメリットも大きいのです。そして2月16日の中医協総会で、この2機種が保険適用されることになりました。3月から暫定価格で使用可能で、4月以降の保険償還価格は「デュラハート」が1810万円、「エヴァハート」は本体が1810万円、血液ポンプを冷却するクールシートユニットが105万円となりました。

しかし問題は、新たに承認された2機種とも体重20キロに満たない6歳未満の児童には使えないことです。6歳未満で補助人工心臓が必要な子どもは年間20〜30人いると言われています。そしてこの様な状態にある子どもたちは、ほとんどが1年未満で亡くなってしまいます。東大病院などは年内にもドイツのベルリンハート社製の小児向け補助人工心臓の治験を始める予定だそうです。これは入院治療が必要な「体外型」ですが、早ければ2014年の製造販売承認取得を目指しています。

もう一つ、今回も補助人工心臓は移植までの「つなぎ」として認められましたので使用には、日本臓器移植ネットワークへの登録が必要となります。そのため使用に大きな制限がかかっています。現在の心臓移植の提供基準では60歳以上は登録できません。そのため適応を移植を前提とすると重症心不全の患者が急増する60歳以上は補助人工心臓を付けられません。今後は移植適応年齢の引き上げや機器の性能向上に伴い永久使用を認めるかどうかも新たな問題となってくると思われます。

レシピエント選択基準の変更

去る2月1日に第37回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会が開かれ腎臓移植希望者と肝臓移植希望者の選択基準、肝臓臓器提供者適応基準が審議され承認されました。

腎臓:主な変更点は、腎臓移植希望者選択基準では、HLAの適応度の点数が1.15倍されました。その結果DR座ミスマッチが0でA座及びB座のミスマッチが0の場合14点から16.1点に、1ミスマッチが13点から14.95点に、2ミスマッチが12点から13.8点となりました。待機期間20年は、ほぼ12.6点ですからこれで少しですが待機期間の比重が下ることになりました。もう一つは、今まで16歳未満については14点加算されていましたが、それに加え16歳から20歳未満については12点加算されることになりました。これらの改正で、非常に不利だった16歳から20歳未満にも提供されるようになったことと、20歳から30歳でも年間数例は提供されるようになると予想されています。また注として新ルール実施後1年を目途に新ルールの状況について検討を行い、必要があれば基準の見直しをすることも明記されました。

肝臓:肝臓移植希望者の適応基準の変更点は、移植時が生後24ヶ月未満の場合には医学的緊急性9点の場合に限り、血液型不適合の待機者も候補として考慮すること、そして選択時に生後24ヶ月未満の場合には医学的緊急性9点の待機者は、血液型を問わず、1.5点を加点する。臓器提供者が18歳未満の場合には、選択時に18歳未満の移植希望者に限り1点を加点する。これ以外では肝臓と小腸同時移植についても決まりました。

肝臓移植希望者の適応基準では慎重に適応を決定する項目が変更となり、「重度投入病」「過度の肥満」「重度の熱傷」を削除して「重度投入病、過度の肥満、重度の熱傷、その他の重度の全身性疾患」としてまとめられました。また新たに「HBc抗体陽性」「先天性の代謝性肝疾患の保有の可能性がある者」が追加されました。


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